STATEMENT

都市の「コピー&ペースト」と「アーキタイプ」

ARCHETYPE\Tokyo 23-ku Series#1, 2009 – \江東区冬木#1|Koto-ku Fuyuki#1|Tokyo, 2011

スイスの分析心理学者カール・グスタフ・ユングは、個人の意識の下の無意識のさらにその下に、人類に普遍的に受け継がれているものとして「アーキタイプ」(=「潜在的同一性」)の存在を指摘しました。私はこの概念に触れた時、都市にもこの「アーキタイプ」があるのではないかと考えました。なぜなら、私は「スクラップ&ビルド」を繰り返しながら変化していく都市の姿を見るにつけ、それが意識や文化を持った生き物の様に感じ、そこに何か大きな力が作用しているのを感じていたからです。

そして、「アーキタイプ」についてさらに調べてみると、「ある民族ないし人種が同様の経験を反復するうちに、一定の精神的反応を示すようになり、特有の集団的無意識をもつにいたる。」(出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目辞典より一部抜粋)とありました。この「同様の経験を反復する」とは、まさに都市における「スクラップ&ビルド」のことであり、これにより都市が「集団的無意識」を獲得し、これを力点として都市が展開されていくのではないかと考えました。

例えば、ある建物が取り壊され更地となり、その場所にまた別の建物が建設されるわけですが、その建物は「いつか何処かで見たもの」ではないでしょうか。また、高いところから都市を見渡してみれば、眼前に広がる景象はすべて「いつか何処かで見たもの」で埋め尽くされていることに気づきます。つまりマクロ的にみれば「スクラップ&ビルド」とは「コピー&ペースト」であり、そのコピーのオリジナルこそが「アーキタイプ」となるのです。

私の制作のテーマは、こうした都市の「集団的無意識」の作用点として具体化されたあらゆる構造物(住宅、ビル、生産施設、道路、駅、橋、運河、公園…)や、それらの景象を写し取り、シリーズ化することで、都市の奥底に潜む「ア―キタイプ」を探ることです。

こうしたアプローチにおいて、写真は最適なメディウムであると言えます。リアルに対峙するよりも、写真に写しとって眺めた方が細部が強化され、無時間的となり、じっくり検討することができるからです。また、シリーズ化により収集した写真を並べて観察することで、差異と類似を可視化でき、よって潜在的同一性(=「アーキタイプ」)の存在を浮かび上がらせることが可能となります。そしてそれらを比較するためには、同条件での撮影が必須で、かつ細部まで観察できるよう、影がでないフラットな光での撮影が望まれます。また、構造物や景象に意識を集中させるために、人影が少ない時間帯に撮影しています(レタッチにより、人影を消去している場合もあります)。

現在は主に東京近郊でこの「ARCHETYPE」プロジェクトの複数のシリーズを同時並行的に進めており、今後はこれらの対象や地域を広げていきたいと考えております。

27 September 2021 渡辺楷