アーカイバルピグメントプリントと保存額装

アーカイバルピグメントプリントとは、長期保存に適した用紙と高品質なインクとを使用して制作されるインクジェットプリントのことで、適切な保存環境下であれば、100年以上の耐久性が期待されている。
それは、OBA*1を含まない天然由来の材料 (コットン、アルファセルロース*2、麻、楮、竹など) をベースにした耐久性の高い無酸性*3のデジタルファインアート紙*4に、保存性の高い水性顔料インクを使って、ハイエンドなデジタルプリンタで出力するものである。
実体のないデジタルイメージのデータが、インクに変換されプリントされることで、アナログイメージとなる。
物質としてのプリントには確かな厚み、重さ、質感があり、ペーパーのテクスチャと相まって立体感や奥行き感を持ち、イメージに
新たなリアルさ存在感を与えてくれる。
保存額装は、長期保存や劣化防止を重視した額装方法です。作品を長期間保存するために、作品に悪影響を与えず、耐久性のある素材や特別な技術が使用されます。保存額装では、酸や湿気、紫外線などから作品を保護するために、特殊なガラスやアクリル、純度の高い繊維で作られたマットボードなどが使用されます。これにより、作品の劣化や変色を最小限に抑え、長期間にわたって美しさを維持することが可能になります。
作品を長期保存するためには、マットの材料に良質な物を使う必要があります。多くの美術館やギャラリーでは、一般にミュージアムボードと呼ばれる、綿の繊維で作られたボードや、国産のピュアマットという綿繊維とパルプ混のボードを使用しています。 リグニンを含まない純度の高い繊維を使ったボードで、吸湿性があり、外気から作品を保護してくれます。 額装するときはブックマットをそのまま額に入れればよく、プリントに直接触れることなく手軽に作品を扱えるので、物理的損傷の機会も大幅に減少します。マットをしてあればプリントとガラスの間に空間が出来るので、ガラスの雑菌による汚染や、ガラスとの癒着を防ぐことができます。
現在の裏板は写真活性度試験に合格した、軽量でバネの滑りが良い樹脂発泡ボードを使用しています。
*1 ペーパーをより白く見せる目的で使用される蛍光増白剤の事。分子構造が不安定で、経年劣化によりプリントが黄色みをおびてしまうことがある。
*2 木材中に20~30%存在する酸性化の原因となるリグニンを取り除いた木材パルプ。リグニンと紫外線が化学反応を起こすと酸性化する。
*3 無酸性が重要視されるのは、酸性の紙は20~25年経過すると茶褐色に退色するため。
*4 美術用途で使用されてきた版画紙や水彩画紙といった画材用紙にインク受容層を設け、インクジェットプリンタに対応させたもの。